当初はアルミニウムという材質を基準とするHSコード(7616.99、関税率3%)と判断された製品について、関税分類上の論点を整理し、改良後製品で再度、文書事前教示を実施

概要

SKアドバイザリー株式会社は、海外企業が日本へ輸入する定温管理輸送用コンテナについて、HSコードの検討および日本税関への事前教示を支援しました。

対象製品は、温度変化に敏感な物品を一定の温度帯に保ちながら、複数の輸送方式を通じて繰り返し使用するための特殊な輸送用コンテナです。

お客様は、当該製品がHS 8609の「一以上の輸送方式による運送を行うために特に設計し、かつ、装備したコンテナ」に該当すると考えていました。HS 8609に分類される場合、日本での関税率は無税です。

しかし、最初の事前教示では、税関から、製品の主な材質に着目した別のHSコードに分類されるとの回答が示されました。この分類では関税が発生するため、継続的に日本へ輸入するお客様にとって、将来の関税コストにも影響する重要な問題でした。

当社は、税関の回答内容を分析し、関税率表、関税率表解説および製品の客観的な構造・機能・用途に基づく意見書を作成して、税関へ再検討を求めました。

その時点では当初の回答を変更するには至りませんでしたが、その後、製品に実質的な改良を加え、当社は改良後の製品について改めてHSコードを検討し、新たな事前教示を行いました。

その結果、改良後の製品について、HS 8609に分類され、関税率は無税となる旨の正式な事前教示回答を取得することができました。

Temperature-Controlled Shipping Container

相談の背景:定温輸送コンテナは「アルミニウム製品」か「輸送用コンテナ」か

今回の対象製品は、医薬品等を定温・低温の状態で輸送するために使用される、反復使用可能なコンテナです。

関税分類上の主な候補は、次の二つでした。

  • HS 8609.00:一以上の輸送方式による運送を行うために特に設計し、かつ、装備したコンテナ
  • HS 7616.99:その他のアルミニウム製品

HSコードは、関税率表の部注、項の規定、関税率表解説および製品の客観的な構造・機能・用途を総合的に確認し、その製品がどの項の要件を満たすかを判断する必要があります。

本件では、アルミニウムを使用した容器であるという点だけでなく、対象製品が複数の輸送方式による運送のためにどのように設計され、どのような輸送用装備を備えているかが重要な論点となりました。

初回の事前教示及び「意見の申出書」の提出

最初の事前教示では、お客様が希望していたHS 8609ではなく、製品の材質に基づくHS 7616が回答されました。

これを受け、当社より、「事前教示回答書に関する意見の申出書」を税関に提出しました。意見書では、単に希望するHSコードを主張するのではなく、次のような順序で関税分類上の論点を整理しました。

  1. 関税率表および関税率表解説から、HS 8609の要件を明確にする
  2. 製品の構造、機能、用途および輸送方法に関する事実を整理する
  3. 製品の具体的な特徴が、HS 8609の各要件にどのように対応するかを説明する
  4. 図面、写真、仕様書および輸送資料により、説明内容を客観的に裏付ける

しかし、税関からは、HS 8609にいう「一以上の輸送方式による運送を行うために特に設計し、かつ、装備したもの」の要件を満たすとは認められないとして、事前教示の回答に変更は無いという回答が示されました。

転機:製品改良後の再チャレンジ

上記の日本税関による事前教示回答結果を踏まえ、輸送時の荷扱いや安全性に関係する製品仕様について、実質的な改良を行いました。

当社は、改良内容を確認したうえで、改良後の製品は、従来の製品とは別の具体的貨物として、改めて関税分類を検討する余地があると判断しました。

ここで重要なのは、単に製品名や型番を変更したのではなく、関税分類上意味のある構造・機能・装備の変更が行われたことです。

製品に実質的な改良が加えられた場合、改良後の製品について、以前の事前教示回答とは別に、新たな事前教示を申し込める可能性があります。

ただし、どのような改良でも別製品として取り扱われるわけではありません。改良前後の違いが、関税分類の判断に影響するものであることを、仕様書、図面、写真その他の資料で客観的に説明する必要があります。

改良後製品に関するSKアドバイザリーの対応

1.海外メーカーの英語技術資料を関税分類の観点から精査

海外メーカーから提供される資料は、通常、製品開発、営業、品質管理または輸送実務を目的として作成されています。

そのため、英語資料に記載された情報をそのまま日本語へ翻訳しただけでは、HSコードの根拠資料として十分とは限りません。

当社では、製品の設計担当者等から英語で情報を収集し、関税分類の観点から再整理しました。

2.HS 8609の要件に対応した日本語の補足説明書を作成

改良後の製品の装備について、単に「部品が付いている」と説明するのではなく、各装備がHS 8609の関税率表解説で示される装備とどのように対応するかを整理しました。

そのうえで、次のような点を中心に日本語の補足説明書を作成しました。

  • 複数の輸送方式による使用を前提として設計されていること
  • 輸送中の荷扱いおよび安全性のための装備を有すること
  • 輸送機器等へ固定して使用できる構造を有すること
  • 途中で再梱包することなく輸送できること
  • 頑丈な構造を有し、繰り返し使用されること

3.HS 8609の要件に対応した日本語の補足説明書を作成

また、他国の税関から取得したHS 8609の事前教示回答についても、補強資料として活用しました。

外国税関の事前教示は日本税関を法的に拘束するものではありませんが、同一または類似する製品について、HS条約を採用する他国の税関がどのように判断しているかを示す参考資料となる場合があります。

もっとも、外国税関の回答だけを根拠とするのではなく、日本の関税率表および関税率表解説に基づく説明を中心に据えることが重要です。


結果:HS 8609(関税率:無税)

日本税関から、改良後の製品についてHS 8609に分類する旨の正式な事前教示回答が発出されました。

関税率は無税です。

税関から文書による事前教示回答を取得したことにより、今後の輸入におけるHSコードの根拠が明確となり、継続的な輸入における関税コストの適正化と輸入コンプライアンスの向上につながりました。

本件から得られる実務上のポイント

1.不利な事前教示回答を受けても、判断理由を分析することが重要

税関から希望と異なるHSコードが回答された場合には、まず税関がどのような事実と法的根拠に基づいて判断したかを確認する必要があります。

必要に応じて、追加資料の提出や意見の申出を検討することができます。

2.関税分類に影響する製品改良が行われた場合には、再検討の余地がある

事前教示は、照会した具体的な貨物に対する回答です。

その後、製品の構造、材質、機能または装備に実質的な変更が行われた場合には、改良後製品について、新たに関税分類を検討できる可能性があります。

3.海外の英語資料を、日本税関向けの説明へ再構成する必要がある

海外メーカーの英語資料は、そのままでは日本税関がHSコードを判断するために必要な情報が十分に整理されていないことがあります。英語の技術資料を翻訳するだけでは十分では有りません。

特に本件のような複雑な製品では、海外メーカーの技術者が使用する表現をそのまま翻訳するだけではなく、

  • どの事実が関税分類上重要なのか
  • 関税率表のどの文言に対応するのか
  • どの写真、図面または試験資料が必要なのか
  • 税関にとって理解しやすい順序でどのように説明するか

を判断し、日本語の専門文書として再構成する必要があります。

4.海外税関の事前教示は、補強資料として活用できる場合がある

外国税関が発出した事前教示回答は、日本税関を拘束するものではありません。一方、同一または類似する製品について、HSの国際的な共通体系に基づき同様の分類が示されている場合には、日本税関に対する説明を補強する参考資料として活用できることがあります。

もっとも、外国税関の回答書を提出するだけで、日本における分類の妥当性が認められるとは限りません。

日本の関税率表、部注・類注、関税率表解説、分類例規および製品の客観的な性状に基づく説明を中心に据え、外国税関の回答は、その分類主張を補強する参考資料として位置付けることが重要です。日本税関も、関税率表解説や分類例規を品目分類のための資料として位置付けています。

SKアドバイザリー株式会社の支援内容

本件において、当社は主に次の支援を行いました。

  • 文書による事前教示回答取得までの税関との協議
  • 製品のHSコードおよび関税率の検討
  • 過去の事前教示回答および税関の判断理由の分析
  • 海外メーカーからの英語による技術情報の収集
  • 英文仕様書、図面、写真および輸送資料の精査
  • 関税率表、部注および関税率表解説に基づく法的検討
  • 日本語による事前教示照会書の作成
  • 日本語による製品仕様の補足説明書の作成
  • 写真・図面を使用した輸送用取付具の機能説明
  • 事前教示回答に対する意見の申出書の作成・提出
  • 製品改良後の再申請方針の検討
  • 外国の事前教示回答の分析・活用
  • 日本税関からの追加質問および照会への対応

SKアドバイザリー株式会社の強み:海外の技術情報を、日本税関に通じる関税分類の説明へ

本件は、単に事前教示の様式へ製品情報を記載すれば解決する案件ではありませんでした。

海外メーカーから英語で提供される複雑な技術情報を理解したうえで、その情報を日本の関税率表、部注、関税率表解説および税関実務に則した形で整理し、税関が判断できる日本語の説明資料へ落とし込む必要がありました。

また、不利な事前教示回答を受けた後には、その判断過程を分析し、HSルール上の判定要件、事実認定および両者のあてはめを理路整然と示した意見書を作成する必要がありました。

このような業務には、次の能力を横断的に備えることが求められます。

  • 英語による海外メーカーとの技術的コミュニケーション
  • 製品の構造および物流実態を把握する能力
  • HSコードおよび関税率表解説に関する専門知識
  • 日本の関税法令および税関実務に関する理解
  • 税関に提出する日本語の法的専門文書を作成する能力
  • 税関担当官との継続的な協議・調整能力

SKアドバイザリー株式会社では、通関士資格を有する関税専門家が、海外企業と日本税関との間に立ち、英語の製品情報を、日本税関に対して説明可能な関税分類上の根拠へと組み直します。

単なる英文翻訳や通関手配にとどまらず、製品の客観的な特徴とHSルールを結び付け、税関に伝わる資料と論理を構築することが、当社のHSコード・事前教示支援の特長です。

監修者:
澤田圭佑
SKアドバイザリー株式会社 代表取締役
通関士有資格者/関税・貿易コンサルタント

当社の特長

当社は、通関と税務の交差点にある複雑な課題にも精通しており、両面から実務的にご支援できることが、他社にはない大きな強みです。
関税と国税の密接な関係を的確に理解し、包括的に対応することは、国際取引において極めて重要です。

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※ACP 税関事務管理人を利用することで、輸入(非居住者を輸入者(IOR - Importer of Record)とする)及び輸出(非居住者を輸出者(EOR - Exporter of Record)とする)のいずれのケースにおいても同様にサポート可能です。

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当社の強み

  • 関税・貿易分野における高い専門性:SKアドバイザリー株式会社は、関税・貿易の法律と実務に精通したプロフェッショナル集団です。代表の澤田は通関士資格を有し、貿易会社での実務経験と、世界4大ファームであるKPMG(KPMG税理士法人)での関税コンサルティング経験を経て2020年に独立。関税法を軸とした確かな知識と経験に基づき、丁寧かつ的確なサポートを提供します。また、澤田は世界銀行のビジネス環境調査プロジェクトにおいて、税関・国際貿易分野(日本)の外部専門家を務めています。
  • 税関事務管理人および消費税の納税管理人のワンストップ対応:信頼できるパートナー税理士と連携し、税関手続きの代理人(税関事務管理人<ACP>)と国税・税務署での消費税手続きの代理人(消費税の納税管理人<JCT Tax Representative>)の両方を包括的にサポートすることができます。
  • 関係法令コンプライアンスの徹底:輸出入に係る関係法令の遵守を最優先に取り組んでいます。税関等当局との協議相談をクライアントに代わり実施し、適正な輸出入オペレーション構築を支援します。
  • 英語・中国語でのコミュニケーション:英語でのコミュニケーション(英語会議のファシリテーション含む)を得意とし、クライアントからの厚い信頼を得ています。中国語でのコミュニケーションができるスタッフも揃えています。
  • 豊富な実績と信頼:年間100社程度の税関事務管理人の登録を行い、ほぼ全てのクライアントが問題無く輸出入を実施できています。
  • 他法令対象物品への対応体制:電気用品安全法(PSE)対象製品や、食品・食器(食品衛生法)などの各種法令対象物品についても、輸入支援が可能です。
  • Amazon SPN (Service Provider Network) 公認 サービスプロバイダー:Amazon SPN の公認サービスプロバイダーとして、税関事務管理人サービスを提供しています。(税関事務管理人/貿易コンプライアンス分野)
Amazon SPN

 

日本税関の制度改正(輸入者の意義の明確化)

2023年10月1日からの制度改正により、*ACP 税関事務管理人を利用して外国法人自らが*IOR 輸入者にならなければならない(他の者を名義上だけ輸入者とすることは認めない)ケースが増えています。

例えば、外国法人自らがIOR 輸入者とならずに、何ら売買にも関与しないフォワーダー・通関業者その他第三者をIOR 輸入者に名義上仕立てている場合、輸入者として認められない可能性が高く、注意が必要です。

改正の内容(輸入者の定義)を踏まえると、基本的に輸入者になれる者は以下のいずれかである必要があります。

(1) 通常の海外の売手と日本の買手による売買取引(輸入取引)による輸入:荷受人等

(2) (1)以外の形態で輸入する場合:

  • 輸入申告時点において、「輸入後の貨物の処分権限を有する者」 又は、
  • 「輸入の目的たる行為を行う者(以下例示)」

・ 賃貸借契約に基づき輸入される貨物は、当該貨物を賃借して使用する者
・ 委託販売のために輸入される貨物は、当該貨物の販売の委託を受けて自己(受託者)の名義をもって販売する者
・ 加工・修繕のために輸入される貨物は、当該貨物を加工・修繕する者
・ 滅却するために輸入される貨物は、当該貨物を滅却する者

*本改正において、「処分権限を有する者」が輸入者の意義として明確に位置付けられた点は、特筆すべき変更といえます。ここでいう「処分権限」とは、関税関係法令に明文の定義規定はないものの、税関への確認によれば、「貨物を国内に引き取った後に当該貨物をいかに取り扱うかを決定する権限であり、例えば、当該貨物を販売するか否か、または売買契約に合意するか否かを決定する権限等」を意味します。

*ACP = Attorney for Customs Procedures  *IOR = Importer of Record

改正の内容(2023年10月1日施行)

輸入者の定義

(1) 輸入取引により輸入される貨物については、関税法基本通達6-1⑴に規定する「貨物を輸入する者」と同様とする。・・(通常の海外の売手と日本の買手による売買取引により輸入された場合の荷受人等)

(2) 上記以外の場合には、輸入申告の時点において、国内引取り後の輸入貨物の処分の権限を有する者をいい、その者以外に輸入の目的たる行為を行う者がある場合にはその者を含むものとする。

輸入の目的たる行為を行う者の例示

・ 賃貸借契約に基づき輸入される貨物は、当該貨物を賃借して使用する者
・ 委託販売のために輸入される貨物は、当該貨物の販売の委託を受けて自己(受託者)の名義をもって販売する者
・ 加工・修繕のために輸入される貨物は、当該貨物を加工・修繕する者
・ 滅却するために輸入される貨物は、当該貨物を滅却する者

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