更新 2025年4月17日 by SKアドバイザリー株式会社
これまで当社では、日本に拠点を有さない多くの海外企業(非居住者等)に対して、日本への輸入および日本からの輸出をサポートしてまいりました。本記事では、その実績を踏まえ、海外企業が把握しておくべき日本で輸出入を行う際に直面する主な課題と、「税関事務管理人(ACP)」および「消費税(JCT)納税管理人」の役割やその重要性について、ポイントを絞ってご紹介します。
輸入者が不在となる課題
日本の関税法上、日本に住所等を有さない外国法人が日本で輸入者または輸出者となるためには「税関事務管理人(通称「ACP」、Attorney for Customs Procedures、又は Customs Procedures Agent 」を任命する必要があります。これにより、日本国内に住所・事業所を有しない外国法人であっても、自らが輸入者・輸出者として貨物の通関が可能となります。
通常の貿易においては、日本の買手が輸入者になるのが一般的ですが、昨今では以下のような多様なケースが増えています:
- Amazon FBAや楽天などの越境ECを利用し、海外セラーが日本国内の倉庫に商品を保管し、販売するモデル
- 展示会などに出展するための一時的な輸入
- 自社利用を目的とした設備・サーバー等の持ち込み
このようなケースでは、輸入時において日本国内に輸入者が存在せず、通関ができないまま港や空港で貨物が滞留してしまう事例も少なくありません。急いで税関事務管理人のセットアップが必要となります。当社にはそのような「緊急対応」のご相談も多く寄せられ、最短で対応可能ではありますが、理想的には出荷前の段階から税関事務管理人を任命し、事前準備を整えておくことが望ましいです。
▶ 参考リンク:
厳格化される「輸入者になれる者」の要件
2023年10月の関税法基本通達の改正により、輸入者の要件が厳格化され、事業に関係のない日本法人に「輸入者の名義貸し」をさせることは認められなくなりました。
海外の売手と日本の買手との一般的な貿易取引以外のケースにおいては、原則として、輸入時における貨物の「所有者(処分権を有する者)」など一定の者が輸入者となるべきとされています。私どものお客様(外国法人)では、その多くが、外国法人が所有したまま輸入するため、その者が自ら輸入者となって輸入する必要があり、そのために当社が税関事務管理人となっています。
後述しますが、輸入時に支払う「輸入消費税(JCT)」の還付(控除)を受けるには、海外事業者が自ら輸入者でになることが要件となっており、非常に重要なポイントとなります。
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輸入時に支払うべき関税・輸入消費税について
輸入時に支払うべき税金は大きく以下の2つに分かれます:
▶ 関税(Customs Duty)
関税額は、輸入申告額に対する関税率で計算されます。関税率は輸入貨物のHSコードによって異なり、こちらのリンクから確認することができます: 日本税関(実行関税率表)
▶ 輸入消費税(JCT)
課税価格(輸入申告額+関税額)に対して一律10%が課されます。
税務署への申告納税
輸入後、国内販売時に10%の売上消費税を顧客から徴収することができます。顧客から預かった売上消費税は、免税事業者でない限り、年次の確定申告等を通じて税務署(国税)に申告納付する必要がありますが、納税時に支払った消費税(輸入消費税を含む)の仕入税額控除が可能です。したがって、この場合、輸入消費税はコストではなく、キャッシュフローに影響がある性格のものと言えます。
輸入消費税の仕入税額控除ができるのは輸入申告名義人(Importer of Record - IOR)のみ
輸入消費税の税額控除を適用できる権利を有するのは輸入者(輸入申告名義人 = Import of Record - IOR)のみです。ですから、税関事務管理人の任命が重要になってくるわけです。税関事務管理人を任命して海外事業者自らが輸入者にならないと(例えば全く別の第三者を輸入者名義として輸入させてしまっていた場合には)、輸入消費税を取り返すことができなくなって大きな損失を出すことになるため注意が必要です。
消費税インボイス制度への対応
消費税に関しては、2023年10月から開始した消費税インボイス制度も考慮しなければなりません。そもそも消費税の納税義務がある(免税事業者になれない)のであれば適格請求書発行事業者になるべきですし、免税事業者の場合であっても、(売手が)適格請求書発行事業者でない場合は、顧客(買手)が仕入時に払った消費税の全額を仕入税額控除できなくなるため、顧客との関係を見極めて、積極的に適格請求書発行事業者になるべきでしょう。ただし、適格請求書発行事業者になれば自動的に免税事業者からは除外されるため、必ず消費税の申告納付を開始しなければなりません。
消費税の納税管理人を選任しましょう
税務署への適格請求書発行事業者の登録や消費税申告等の手続きに関しては、税関事務管理人とは別に、「納税管理人」の任命が必要です。通常、税理士事務所等が担います。当社は納税管理人サポートが可能な税理士事務所とネットワークを有しており、ワンストップで対応可能です。
▶ 参考リンク:
輸入申告価格の算定(関税評価)
関税評価(Customs Valuation)は難しい論点の1つです。
世間一般の貿易取引、すなわち(特殊関係にない第三者同士の)海外の売手と日本の買手との売買取引であれば、その売買取引額(CIFベースに調整)を輸入申告価格に用います。これが「輸入貨物の取引価格による方法(原則的な方法)」となります。
海外事業者から、海外の売手(サプライヤー)と海外の買手(我々のクライアント)との売買取引(コストベース)を申告価格に用いることができないのか?とよく質問を受けますが、上記の要件に該当しないため、原則的な方法は使えません。
原則的な方法が適用できないときは例外規定に落ち、同種類似の貨物価額、国内販売価格から一定の国内費用を控除した価額、又は製造原価に一定費用・利潤を加算した価額、その他これらを準用して個別に税関と決定する方法が制度として存在しますが、輸入後に販売をすることが明らかなケースであれば、基本的には国内販売価格に準じた方式を適用することが通例となっています。
申告価格は関税及び消費税の計算に影響します。しかし、上述のように日本は関税率は低い方なので関税額への影響はない事業者が多いです(勿論、物によっては高い関税率も有り得るので事前に確認することが重要です)。
申告価格がもたらす輸入消費税への影響と言う観点では、しっかりと税関事務管理人と消費税の納税管理人を定めていれば消費税は取り返せるためコストとはなりませんから、申告価格について悩む必要はありません。
▶ 参考リンク:
輸出時の対応:安全保障貿易管理(輸出管理)と消費税の輸出免税
税関事務管理人を任命すれば、日本に拠点等を持たない外国法人(非居住者等)でも自らが輸出者(Exporter of Record)となることが可能です。しかし、近年、半導体や電子機器等に対する輸出規制が強化されており、該非判定や経済産業省の許可取得など、複雑で難易度の高い手続きが求められます。
日本国内で仕入れた製品を輸出する場合、「輸出免税制度」により消費税の還付を受けられるのは、輸出申告名義人(輸出者)に限られます。従って、輸出においても税関事務管理人を通じて輸出者となることが重要となってくるわけです。
▶ 参考リンク:
おわりに
日本に事務所等のない海外事業者(非居住者等)が日本での輸出入ビジネスを成功させるためには、単なる通関手続き以上に、税関・税務署を含めた法令対応が極めて重要です。税関事務管理人(ACP)と消費税(JCT)納税管理人を適切に活用することにより、コンプライアンス(法令順守)を果たしながら日本市場でのビジネス展開が可能となります。
ご不明点やご相談がございましたら、いつでもお気軽にSKアドバイザリー株式会社までご連絡ください。
当社は、通関と税務の交差点にある複雑な課題にも精通しており、両面から実務的にご支援できることが、他社にはない大きな強みです。関税と国税の密接な関係を的確に理解し、包括的に対応することは、国際取引において極めて重要です。
当社の御客様(税関事務管理人サービス)
連携実績のある国際物流会社の例
数多くの物流会社様との連携実績があります。当社は、税関事務管理人としての役割を担い、物流会社様に物流・通関・倉庫業務などの対応をいただいています。
当社の消費税・納税管理人サービスについて
SKアドバイザリー株式会社では、税関手続きを代理する「税関事務管理人(ACP)」と、消費税の国税(税務署)手続きを代理する「納税管理人(JCT Tax Representative)」を包括的にサポートする「ワンストップサービス」を提供しています。
消費税の納税管理人業務の範疇に関しては、当社と提携する税理士事務所に業務委託し、当社が元請けとしてサービス全体の品質と進行を統括します。税関事務管理人が税理士と綿密に連携することにより、輸入時に支払った消費税の控除・還付を実現させます。
契約ストラクチャー(税関事務管理人及び消費税の納税管理人ワンストップサービス)
標準業務内容(消費税の納税管理人サービス)
当社と提携する認定税理士との連携により、以下の業務を提供いたします。
- 消費税の課税事業者登録ご支援(適格請求書発行事業者番号(インボイス番号)の取得等含む)
- 納税管理人の届出
- 消費税申告の準備・申告代理
- 税務署との連絡調整
- その他消費税に関するアドバイス
税理士の柔軟なご紹介体制
クライアントの事業概要や税務上の複雑性に応じ、国際税務に精通した税務アドバイザーをご紹介することも可能です。