更新 2024年8月17日 by SKアドバイザリー株式会社
日本では、関税法の規定により、輸入者(輸入申告者)となれる者の定義が定められています。2023年10月の関税法基本通達改正により、輸入者となれる条件が厳格化されました。そのため、特に日本に事務所を持たない外国法人は、他の第三者を名義上の輸入者として指定することが難しくなり、税関事務管理人を利用して自らが輸入者となるケースが増えています。
関税法基本通達6-1 によると、輸入者とは以下のように定義されています。
関税法基本通達 6―1
(納税義務者に関する用語の意義)
法第 6 条に規定する納税義務者に関する用語の意義は、それぞれ次による。(1) 「貨物を輸入する者」とは、輸入取引(定率法第 4 条第 1 項に規定する輸入取引をいう。後記 67―3―3 の 2 において同じ。)により輸入される貨物については、原則として仕入書(仕入書がない場合には船荷証券等)に記載されている荷受人 ・・・をいい、貨物が輸入の許可前に保税地域等において転売されたような場合には、その転得者をいう(以下これらの者を「輸入者」という。)。
このように、「輸入取引」がある場合、原則として荷受人(Consignee)が輸入者となることを示しています。「輸入取引」とは、以下のように関税定率法で規定されています。
本邦に拠点(住所 、居所、本店、支店、事務所、事業所その他これらに準ずるもの。)を有する者(個人であるか法人であるかを問わない。)が買手として貨物を本邦に到着させることを目的として売手との間で行つた売買であつて、現実に当該貨物が本邦に到着することとなったものをいう。
通常、この定義に合致する売買が存在する場合、荷受人(Consignee)が輸入者となります。しかし、必ずしも貨物の受取人が輸入者(荷受人)でなければいけないというわけではありません。
例えば、私どもが税関事務管理人を務めるケースにおいて、海外の売手と日本の買手との売買取引により貨物を日本の買手に送付する場合で、売買契約上何らかの理由により日本の買手側が輸入者とならない場合において、海外の売手が(税関事務管理人を利用して)輸入者・荷受人となることがあります。海外の売手が輸入し、輸入後に日本国内において日本の買手に国内販売することになります。
ただし、このようなB2Bの売買取引において、海外の売手側が輸入者・荷受人となることは簡単に認められるわけでもありません。税関事務管理人が専門的な知識と法的論理を駆使して、税関に対して適切な説明を行い納得してもらう必要があります。
「輸入取引」に該当しないケース
さて上記の「輸入取引」の定義を再確認すると、日本に拠点を有する者が買手となる売買取引に限定されています。そのため、日本に拠点を持たない外国法人が海外で購入した商品を日本に送る場合や、売買を伴わない無償取引での輸入は、「輸入取引」の定義に当てはまりません。このような場合、輸入者となれる者の条件は、以下のように規定されています。
関税法基本通達 67―3―3 の 2
(貨物を輸入しようとする者の意義)
令第 59 条第 1 項第 1 号に規定する「貨物を輸入しようとする者」の意義については、次による。(1) 輸入取引により輸入される貨物については、前記 6―1(1)に規定する「貨物を輸入する者」と同様とする。
(2) 上記(1)以外の場合には、輸入申告の時点において、国内引取り後の輸入貨物の処分の権限を有する者をいい、その者以外に輸入の目的たる行為を行う者がある場合にはその者を含むものとする。この場合において、輸入の目的たる行為を行う者とは、例えば、次に掲げる者が該当する。
イ 賃貸借契約に基づき輸入される貨物については、当該貨物を賃借して使用する者
ロ 委託販売のために輸入される貨物については、当該貨物の販売の委託を受けて自己(受託者)の名義をもって販売する者
ハ 加工・修繕のために輸入される貨物については、当該貨物を加工・修繕する者
ニ 滅却するために輸入される貨物については、当該貨物を滅却する者
なお、当該「貨物を輸入しようとする者」は、法第 6 条の規定に基づき、当該貨物に係る関税を納付する義務を負うことになるので留意する。
このように、「輸入取引」に該当しない場合は、例えば、輸入貨物の処分の権限を有する者が輸入者として認められます。私どもが税関事務管理人として支援する外国法人の多くも「貨物の処分権を有する」ことにより、輸入者として認められています。