インド向け(日インドEPA)は、他FTA/EPAに比べると難易度が高い(苦労する面が多い)と言えます。そもそもの原産地規則が他のFTA/EPAに比べて厳しいのに加えて、2020年には原産地証明に係る新ルール(CAROTAR2020)が運用されるようになり、インド側での輸入者側に求められる新たな業務が出てきました。

 

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難易度の高い原産地規則

他のFTA/EPAでは、関税分類変更基準(CTC)又は付加価値基準(VA)いずれかの基準を満たすことを証することで適用できる場合であっても、日インドEPAでは両方の基準の充足が求められるケースが多くあります。これだけでも、相当な業務負荷が増えることになります。

FTA/EPAに慣れていない企業であれば、例えばこれまでVAだけで原産判定を行ってきていたのに、CTCでの原産判定と言われても投入部品へのHSコード判定の仕方が分からないことも多いでしょう。或いは、VAの算出をしてみると原産資格割合を満たさないから、投入部品の原産化を通じて原産資格割合を高めるべくサプライヤー証明書の取得をする必要があるケースにおいても、サプライヤー側でも同じようにCTCとVA両方の基準の充足が求められるため、原産品とすることができなかった、EPA適用を諦めたなどといった声がよく聞こえてきます。

インド向け原産地規則の基礎をよく理解して、根気強く、時にはサプライヤーの協力も得ながら原産化に取り組む必要があると言えます。  

原産地証明新ルール (CAROTAR 2020, FORM I)

 

概要

従来は、日本商工会議所から取得した原産地証明書を用いてインド側で通関時に提示することでFTA/EPAの適用ができていました。しかし2020年(CAROTAR発出後)以降は、原産性を証明する情報・書類の保持が輸入者にも求められるようになりました。

具体的に「輸入者が保持すべき情報」とは、基本的には、Form I (フォーム・アイ)に記載されている内容のことを言います。インド税関よりForm Iの提出を求めれられた場合、10日以内に提出しなければなりません。これによりインド税関が原産地基準を満たさないと判断した場合には、税関職員は特恵税率の適用を否認することができます。

付加価値基準(VA)の根拠となる原価情報などの一部情報については、輸出者から輸入者側に提示できないものもあることから、必ずしも全ての情報を輸入者側で保持できるわけではありません(それでも現場ではコスト情報が求められることもあります)。

原産性の説明を行う範囲において(インド)輸入者側に渡す情報を整理しておき、もしインド税関からForm Iの提出が求められれば速やかに必要な情報を提出できるように体制づくりをしておく必要があります。

◍ JETRO – 2020年12月 – 原産地証明新ルールCAROTAR 2020で、一時期通関現場に混乱(インド)

◍ 2020年8月21日付インド財務省通知No. 81/2020 – Customs (N.T.)

◍ インド財務省 CAROTAR2020 手引書(Original, English)

◍ インド財務省 CAROTAR2020 手引書(JETRO仮訳、日本語)  

 

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原価情報等の情報保持義務の範囲について

CAROTARの執行が開始された後、インド側の税関からForm Iに原価情報・VA判定上のQVC%値等を提示するように言われ、どのように対応すればよいかという問い合わせが増えました。

なぜ原価情報の提示を求められると困るケースがあるのかというと、Form Iの提出義務者と、Form Iの記載内容の元情報を有する者が異なるからです。Form Iの提出義務者はインド側の輸入者です。インド税関は同輸入者に対してForm Iの提出を求めてきますが、輸入者側で持ち合わせている情報だけではForm Iを十分に記載することはできません。というのも、Form Iは輸入貨物に係る原産品の判定情報について説明を行うものであり、当該原産品の判定を実際に行っているのは、輸出国(日本)側の輸出者や、生産者となるからです。

輸出者や生産者が自社の原価コスト情報を用いてVA判定を行っているのですが、この情報を第三者であるインド側の輸入者に提示しがたいのはビジネス/商慣習上当然のこととご理解いただけるかと思います。(インド側の輸入者が同じグループ会社で情報共有でき得るという場合は除きます)

日本の輸出者・生産者にとって、ビジネス/商慣習上、インドの輸入者に対して共有しがたい情報なのだけれども、現地の税関から要求されているから何とか提示してもらえないかというやり取りが実際によく行われているようです。具体的にどう対処すればよいか、詳細下記しておきます。

[ 争点となっている Form I 記載箇所 – 2.d. ]

 

Form I 記載方法について

輸出者や生産者が有する原価情報(コスト/マージン)等の機密情報にまで、CAROTARが規定する(輸入者の)情報保持義務の範囲が果たして及ぶのか否かというのが議論の争点になりました。   日本ーインド両国政府との協議内容によると、記載方法は以下で事足りると示されています。

  • 付加価値基準(VA)の割合、つまりForm I 上の記載「percentage of local value content」については、輸入貨物の品目別規則の規定の割合を記載する。
  • 付加価値を構成する項目、つまりForm I上の記載「components which constitute value addition」については、計算に使用した主な勘定項目等を記載する。

一つ当方から補足しておきたい点としては、以下の補足(インド財務省発表のQA)にもあるように「あくまで利用可能な場合には原価情報についても提出されるもの」ということであるから、こちらから利用可能な場合でないということ、すなわち輸入者側に原価情報等を共有することは事業上できないということをインド税関側に明確に説明・主張しておくことが良いと考えています。  

 

補足

  • 情報保持義務の範囲に原価情報等の機密情報は含まない旨が示されており、インド財務省(CBIC)発行の手引書にも明示されている。(Q&A パラ9.3, Q5)
  • CAROTARは、原価情報や独自の製造工程に係る情報の保持を義務付けるものではない。利用可能な場合には、提出されるものとするのみである。これについては、輸入者は正確な金額を把握することを期待されているのではない。付加価値の計算上考慮した、原材料費、人件費、利益等の主要項目(major components)の記載をすれば足りる。(Q&A Q5)

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CAROTARに関する在インド日本大使館のセミナー(2020年10月27日付)が非常に参考になります。2021年3月31日まで見逃し配信が実施されていますのでリンクを貼付しておきます。JETROウェブサイトの視聴希望フォーム。  

 

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当社の強み

当社は、関税関連業務の専門性(品目分類(HSコード)、FTA原産地管理、関税評価等)を有し、FTA/EPAの業務管理上求められる各協定の原産地ルール、その他関係法令等のコンプライアンスに基づき適正なアドバイスが可能です。また、数多くのクライアントに対してFTA/EPAの原産地業務上のアドバイスを行ってきた経験から、各社が抱える共通課題や、業界のベストプラクティスにも精通しており、個別企業の状況を勘案した上での実務に則した提言、ハンズオンでのサポートが可能です。

実績例:
(1) ITソルーション導入に伴うFTA原産地管理業務プロセス整備プロジェクト
(2) 本邦及び海外の生産拠点におけるFTA原産地管理業務プロセス整備プロジェクト
(3) 原産地管理の専門ユニットの立ち上げ支援
(4) 日本商工会議所からの原産地証明書取得及び根拠資料整備実務代行
(5) 輸出又は輸入の自己申告書類整備とEPA適用

 

当社のFTA/EPA 特定原産地証明書 取得支援サービス(根拠資料の整備代行サービス)

大まかには以下のような役割分担のもと、特定原産地証明書の取得サポートをしております。基本的にはお客様からは情報提供のみで、それを基に当社の方で、原産地証明書取得に必要なアプローチを検討し、根拠資料の整備を代行いたします。

その後、日本商工会議所のシステム上で行っていただく作業のガイダンスを提供いたしますので、同ガイダンスに基づきお客様の方で証明書発行をするという流れとなります。

プロフェッショナルな専門家コンサルタントに外注することで御客様の業務負荷も抑えられますし、安心してFTA/EPA利用を実現することができます。是非ご活用下さい。

  お客様に対応/提供いただく内容 当社がサポート可能な内容
1. 輸出製品のHSコード確認 ・輸出製品情報 ・HSコードの妥当性確認
2. 税率の確認 ・通常税率 vs. FTA特恵税率比較作業
3. 原産地/品目別規則の確認 ・原産地/品目別規則の確認
4. 品目別規則に基づく根拠資料の作成

[全般]
・製造BOM(構成部品表)
・完成品が部品表に記載された部材で製造されたことを説明できる書類(生産工程表、組図等)

[関税分類変更基準で進める場合]
・部品の製品情報、価格情報(デミニマス利用の場合)

[付加価値基準で進める場合]
・輸出製品のFOB価格
・構成部品の購入価格

[サプライヤー証明書の取得が必要な場合]
・サプライヤーとの連絡調整

[全般]
・最適なアプローチの検討

[関税分類変更基準で進める場合]
・部品のグルーピングの検討
・部品へのHSコード付番
・根拠資料(対比表等)の作成

[付加価値基準で進める場合]
・原産地観点から正しい販売価格、購入価格かどうか検証
・根拠資料(計算ワークシート等)の作成

[サプライヤー証明書の取得が必要な場合]
・サプライヤーへの説明、根拠資料、サプライヤー証明書作成支援
5. 日本商工会議所関連作業①企業登録 ・企業登録
6. 日本商工会議所関連作業②原産品判定依頼 ・日商システムを通じた申請、受け答え ・日商からの質疑への対応サポート
7. 日本商工会議所関連作業③原産地証明書発給 ・日商システムを通じた発給手続き

 

YouTube – EPA/FTA 自由貿易協定の使い方、原産地管理、原産地証明の取得方法(実践ステップ編)

 

 


[FTA/EPA関連サービスページ]

SKアドバイザリーのFTA/EPA・関税サービス

FTA/EPA原産地管理の業務プロセス整備、社内体制構築サポート

HSコード(品目分類/税番分類)の判定サービス

EPA/FTA 顧問サービス

FTA/EPA 特定原産地証明書の取得/自己申告支援サービス

FTA/EPA 簡易ヘルスチェック | 現状診断と課題抽出

[FTA/EPA関連ナレッジページ]

EPA/FTA 自由貿易協定の使い方、原産地管理、原産地証明の取得方法

FTA-1ポイント:品目別規則(PSR)

FTA-1ポイント:関税分類変更基準(CTCルール)

FTA-1ポイント:付加価値基準(VAルール)

FTA-1ポイント:必要となる根拠資料

FTA-1ポイント:証明方式の違い(第三者/自己証明等)

FTA-1ポイント:生産情報の重要性について

FTA-1ポイント:検認 verification

FTA-1ポイント:インド向けEPA対応

FTA/EPA 参考情報まとめサイト