付加価値基準(VA)とは

ご覧いただきありがとうございます。FTA/EPAコンサルタントの澤田です。

付加価値基準とは、製造過程においてどの程度の価値が加えられたかという観点から、「実質的な変更」があったかを測定する基準のことです。

各々のFTA/EPAで要求されている付加価値割合(RVC)を充足する場合、その製品は製造が行われた国の原産品と言うことができます。

なお、原産資格割合を算出する際には、製品の価格(FOB価格など)から非原産材料価格を差し引いて求める控除方式(Build down; BD)がよく用いられますが、この他にも協定によっては積み上げ方式やネットコスト方式などの異なる計算方式によって計算する場合があります。

 

製品、協定FTA/EPAの品目別規則によって関税分類変更基準(CTCルール)のみが求められる場合、付加価値基準(VAルール)のみが求められる場合、日インドEPAに多く見られるように両方のルールを満たすことを求められる場合など、様々なケースがあります。

製品によっては、関税分類変更基準(CTCルール)では原産品と言えなくても、付加価値基準(VAルール)を以てすれば原産品と証することができることもありますので、いずれの基準を用いても正しく原産判定が行えるようにノウハウを習得しておくことが望ましいでしょう。

根拠資料の準備(付加価値基準)

関税分類変更基準では根拠資料として対比表を用意したように、付加価値基準を用いた場合には計算ワークシートを用意するようにしましょう。計算ワークシートのサンプルは経済産業省の保存書類の例示(P15)をご参考になさると良いと思います。

 

サプライヤー証明

原産判定を行う場合、原則として、調達した材料はすべて非原産材料として扱う必要があります。ただし、調達材料の生産者であるサプライヤーから証明書を入手することで、その調達材料を「原産材料」として取り扱うことができます。

原産材料として扱うことができれば、関税分類変更基準においてHSコードの変更が生じなくても問題なくなります。あくまで、関税分類変更基準は、非原産材料からのHSコードの変更を求める規定ですので。また、付加価値基準においても、原産材料の材料価額は、原産資格割合に含めて算出することができるようになります。このように、サプライヤー証明書を用いて材料を原産材料にすることで大きなメリットを享受することができるということです。

サプライヤー証明書の決まったフォーマットはありませんが、基本的に証明書には、以下のような情報が記載されている必要があります。

本件資料の作成年月日、製造された物品の供給先名、製造者の氏名又は名称、住所、担当者の氏名、所属部署名、連絡先、利用する協定名、製造された物品が原産品であることを証明する旨の記載、製造された物品の品名(英文)、物品を特定できる情報(製造番号、型番等)、HSコード、判定基準、生産場所(住所、工場名等)。 

当社にても標準フォーマットを用意しています。お客様にはお渡ししておりますので、御用の際にはお申しつけ下さい。

サプライヤーが原産地管理業務に慣れておらず、証明書の信憑性に心配があるといった声もよく聞きます。当社では、サプライヤーに対する研修・トレーニングを行ったり、第三者機関(当社のような外部コンサルタント)によるハンズオンでのサポートを行って証明書を取得することで、証明書の信憑性を高めることが可能です。

 

実際原価と標準原価について

付加価値基準でよくある質問の1つに、実際原価あるいは標準原価データのいずれを用いるのが最適かという質問が挙げられます。

付加価値基準で計算をする場合に用いる材料の価格(原価)は、原則は、輸出製品の生産に使用される原材料や費用の実際の価格(実際原価)です。しかし、部品の種類や数が膨大で、原材料の価格変動も大きく、製品自体の価格変動も大きいなどの理由により実際原価を用いることが難しい場合には、自社が採用する会計基準に基づき、標準原価や、予定原価を用いることも可能です。ただし標準原価や予定原価を用いた場合には、定期的に実際原価との差異をチェックし、品目別規則に規定されている閾値を常に超えていることを確認する必要があります。

 

価格変動への対応

同一物品を継続的にEPAを利用して輸出する場合には、為替レート、販売価格(FOB価額)、材料価額等の変動により、原産資格割合が閾値を下回ってしまうと適用を取り消さなければなりません。そうならないように、社内において実績単価等の変動を定期的に確認をして、原産資格割合を継続的に満たしていることを検証する必要があります。

部品・材料の点数が多い場合に実績単価を調べきれない場合には、原産性に影響を与えそうな単価の大きい材料を重点的に管理するようにしましょう。また、多少の価格変動に対応できるように原産資格割合を閾値よりも高めに積み上げてバッファ(例えば基準値+10%)を確保しておくといった手立ても有効です。

 

軽微で単純な作業(原産資格を与えることとならない作業)とは

注意しなければいけない点として、付加価値基準を満たしている(品目別規則に定めるHS変更が発生している)としても、生産行為が「軽微で単純な作業」である場合には、原産資格を認めないという規定があります。各協定において、どのような作業が「軽微で単純な作業」とみなされるか具体的に規定されているので確認するようにしましょう。

概ね、以下のような作業が「軽微で単純な作業」として例示されています。

■ 輸送又は保存の間に(産品を良好な状態に保つために)行われる行為(例:乾燥、冷凍、塩水漬け等)
■ 改装及び仕分け (メキシコEPA特恵原産地規則では改装が含まれない)
■ 瓶、箱等の容器に詰める等の包装作業
■ 未完の完成品の部品等の収集
■ 物品を単にセットにすること
■ 組立てられたものの分解

 

累積とは

日本のEPAにおいては、原則としては「(EPA締約国である)輸出国の原産品」を原産材料として取り扱って原産判定を行います。したがって輸出国以外の材料は、一旦すべて非原産材料とみなして、品目別規則を満たすことができるか確認します。しかしながら、輸出国以外の材料でも、EPA締約国の原産材料であればそれを輸出国の原産材料として使用することができるという救済規定があります。これを「モノの累積」と言い、日本の全てのEPAで採用されています。例えば、日EU EPAにおいて、完成品が日本の原産品であるか否かを判断する際に、同じ協定域内の締約国であるイタリアから輸入した材料で、この材料がイタリアの原産材料である場合には、そのイタリアの原産材料を日本の原産材料とみなしてよいということです。

デミニマス規定は関税分類変更基準にしか用いることができませんが、累積は、関税分類変更基準にも付加価値基準にも用いることができる救済規定です。

 

当社の強み

当社は、関税関連業務の専門性(品目分類(HSコード)、FTA原産地管理、関税評価等)を有し、FTA/EPAの業務管理上求められる各協定の原産地ルール、その他関係法令等のコンプライアンスに基づき適正なアドバイスが可能です。また、数多くのクライアントに対してFTA/EPAの原産地業務上のアドバイスを行ってきた経験から、各社が抱える共通課題や、業界のベストプラクティスにも精通しており、個別企業の状況を勘案した上での実務に則した提言、ハンズオンでのサポートが可能です。

実績例:
(1) ITソルーション導入に伴うFTA原産地管理業務プロセス整備プロジェクト
(2) 本邦及び海外の生産拠点におけるFTA原産地管理業務プロセス整備プロジェクト
(3) 原産地管理の専門ユニットの立ち上げ支援
(4) 日本商工会議所からの原産地証明書取得及び根拠資料整備実務代行

 

YouTube – EPA/FTA 自由貿易協定の使い方、原産地管理、原産地証明の取得方法(実践ステップ編)


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[FTA/EPA関連ナレッジページ]

EPA/FTA 自由貿易協定の使い方、原産地管理、原産地証明の取得方法

FTA-1ポイント:品目別規則(PSR)

FTA-1ポイント:関税分類変更基準(CTCルール)

FTA-1ポイント:付加価値基準(VAルール)

FTA-1ポイント:必要となる根拠資料

FTA-1ポイント:証明方式の違い(第三者/自己証明等)

FTA-1ポイント:生産情報の重要性について

FTA-1ポイント:検認 verification

FTA-1ポイント:インド向けEPA対応

FTA/EPA 参考情報まとめサイト  

 

 

 

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付加価値基準に関する外部参考資料

経済産業省 原産性を判断するための基本的考え方と整えるべき保存書類の例示(2019年10月)

JETRO 付加価値基準による 原産性確認と保存書類例

税関 EPA原産地規則マニュアル(2021年9月)