更新 2024年5月12日 by SKアドバイザリー株式会社

税関事務管理人(ACP)とは?

税関事務管理人(ACP)とは、日本に拠点を有しない外国法人(非居住者)に代わり、税関手続きの代理業務を行う者です。

日本に貨物を輸入するには輸入者(IOR – Importer of Record)が必要となりますが、国内に事務所等を有しない外国法人等(非居住者)は、原則、日本に輸入する際に自らを輸入者(IOR)として輸入手続きを進めることはできません。

しかしながら、自らの代わりに税関手続きを行う税関事務管理人(ACP - Attorney for Customs Procedure)を任命した場合には、非居住輸入者(IOR)として輸入手続きを進めることができます。税関事務管理人は、輸入者の代理として各種税関手続きを進めるために、輸入に必要な書類を準備したり、税関やフォワーダー・通関業者等の関係者とコミュニケーションを取って輸入を円滑に完了させるという役割を担い、ACP - Attorney for Customs Proceduresとも呼ばれています。

なお、拠点を有さない海外法人が日本から輸出する際にも同様のことが言えます。原則、非居住者は輸出者(EOR - Exporter of Record)として輸出手続きを進めることができませんが、ACP 税関事務管理人を利用することで非居住者輸出者(EOR) として輸出手続きを進めることもできます。

 

税関事務管理人(ACP)の届出資格

本邦に住所又は居所(法人にあっては本店又は主たる事務所)を有する者であれば、税関事務管理人になること自体は可能です。しかし、関税関係法令のプロフェッショナルでないと適正に対応することは難しいでしょう。輸入手続き・関税関係法令に関する正しい知見・実務経験がないと問題が起きてしまう可能性が高く、素人に依頼するのは御勧めしません。通関業法に抵触する法令違反も生じさせる可能性もあります。通関を適切に手続きを進めることができずに結局輸入通関が通らず、貨物を発送国に送り返されたという例もよく聞きます。勿論その場合、輸入できないどころか返送料、保管料等の不要なコストが発生します。そういったトラブルが発生したときの責任を負うリスクも生じます。

法令遵守して輸入するためには、税関事務管理人(ACP)が責任をもって輸入貨物の税番(HSコード)、関税率、関税評価(輸入申告価格)、原産地、他法令規制、帳簿保存義務(事後調査対応)などについて確認し、責任をもって税関各部門と協議する必要があります。

2023年10月の税関の制度改正(関税法基本通達の改正)により「輸入者の意義」が明確化され、一定の条件を満たさなければ輸入者として認められないこととなりました。そもそも輸入者になろうとしている外国法人・非居住者が、関税法上の「輸入者」として認められる条件を満たしているのか、その点の確認が必要です。依頼元である外国法人・非居住者が「輸入者」の要件を充足しなければ、その代理人たる税関事務管理人の存在も認めてもらえません。

輸出に関しては、輸出貨物・取引が安全保障貿易管理(輸出管理)上の規制物品、規制取引でないか確認を行い、輸出通関に必要となる判定結果書類(該非判定書等)を準備し、必要に応じて経済産業省から許可を取得するといった法令対応が求められます。外為法、輸出令、外為令、貨物等省令等で定められた、主にはリスト規制とキャッチオール規制へのコンプライアンス対応が必要になり、遵守できていない場合の罰則規定も有ります。

 

 

当社(SKアドバイザリー株式会社)は税関事務管理人のプロフェッショナルとして数多くの外国法人の代理人として輸出入のサポートをしております。

 

 

税関事務管理人(ACP)の届出の手続き

税関事務管理人(ACP)制度を利用するにあたり、届出書(税関様式C第7500号)を所轄税関に提出する必要があります。届出書とともに提出が必要な他関連書類に、以下のようなものがあります。

  • 委任状(又は、委任等の契約がある場合は、その契約の内容を明らかにする書類)
  • 届出者の存在を確認する書類(海外の登記簿、住民票等)
  • 税関事務管理人の存在を確認する書類(履歴事項全部証明書等)
  • 商流・取引フロー図
  • 輸入貨物の概要が分かるもの
  • 輸入申告価格の決定方式(適宜、税関評価官と相談の上決定)
  • BL、インボイス
  • 帳簿保存要領
  • 規制物品でないことの説明資料、など

税関事務管理人(ACP)が提出書類を取りまとめ、税関に相談・届出の手続きを行います。届出手続きとともに、貨物の税番(HSコード)、関税率、関税評価、原産地、他法令規制などの確認を行います。必要に応じ、税関や他法令の関係省庁に事前教示を行い法令遵守に取り組みます。

通常、届出手続きは2週間程度で完了しますが、手続きに必要な書類が揃わなかったり、税関との事前協議が円滑に進まない場合には数カ月程度かかるということも有り得ます。実際にそのような話も伺いました。当社では、概ね1~2週間程度で届出手続きを完了させています。

 

日本税関の制度改正(輸入者の意義の明確化)

2023年10月1日からの制度改正により、*ACP 税関事務管理人を利用して外国法人自らが*IOR 輸入者にならなければならない(他の者を名義上だけ輸入者とすることは認めない)ケースが増えています。

例えば、外国法人自らがIOR 輸入者とならずに、何ら売買にも関与しないフォワーダー・通関業者その他第三者をIOR 輸入者に名義上仕立てている場合、輸入者として認められない可能性が高く、注意が必要です。

改正の内容(輸入者の定義)を踏まえると、基本的に輸入者になれる者は以下のいずれかである必要があります。

(1) 通常の海外の売手と日本の買手による売買取引(輸入取引)による輸入:荷受人等

(2) (1)以外の形態で輸入する場合:

  • 輸入申告時点において、「輸入後の貨物の処分権限を有する者」 又は、
  • 「輸入の目的たる行為を行う者(以下例示)」

・ 賃貸借契約に基づき輸入される貨物は、当該貨物を賃借して使用する者
・ 委託販売のために輸入される貨物は、当該貨物の販売の委託を受けて自己(受託者)の名義をもって販売する者
・ 加工・修繕のために輸入される貨物は、当該貨物を加工・修繕する者
・ 滅却するために輸入される貨物は、当該貨物を滅却する者

 

 

当社(SKアドバイザリー株式会社)は税関事務管理人のプロフェッショナルとして数多くの外国法人の代理人として輸出入のサポートをしております。

 

 

税関事務管理人の取扱い制限

一定の法令、例えば薬機法(化粧品含む)、電気用品安全法(PSE)、消費生活用製品安全法(PSC)、食品衛生法に関しては、輸入者が日本の居住者(法人)であることが求められており、取り扱いに制約が生じます。

しかしながら、当社および関係会社とのパートナーシップ体制を構築し、化粧品、電気用品安全法(PSE)規制製品、食品および食器などの法令物品についても、輸入者・税関事務管理人としての対応が可能となりました。

 

税関事務管理人を利用した場合の輸入申告価格の決定方法(関税評価)

海外の売手と日本の買手がいて、その買手が輸入者となる売買取引による輸入(関税法上の「輸入取引」)の場合、その取引価格をCIFベースに調整した価格を申告価格とすることが可能です。これを原則的な決定方法と言います(関税定率法第4条第1項)。

しかしこの原則は、非居住者自らが輸入する場合には利用することができません。(日本に拠点を有する者が買手となる売買取引がある場合にのみ「輸入取引」が成立しますので、日本に拠点を有しない非居住者が単に資産を日本に移動するのは「輸入取引」とはなりません)

そのような場合には、原則的考え方に基づき課税価格を決定することができないため、関税定率法上の規定に基づき、例外的な申告価格決定方式に基づき輸入申告価格を決定する必要があります(関税定率法第4条の2以降)。

例えばアマゾンFBA貨物の場合、その輸入申告価格は「例外的な決定方法」のうち、(関税定率法第4条の4、特殊な輸入貨物に係る課税価格の決定に基づき、定率法第4条の3の国内販売価格に基づく課税価格の決定方式を準用し、)国内販売予定価格から一定の国内発生費用(輸入時の関税及び消費税、Amazonに支払う国内費用等)を控除した価格方式、いわゆる逆算方式がよく用いられています。

 

 

当社(SKアドバイザリー株式会社)は税関事務管理人のプロフェッショナルとして数多くの外国法人の代理人として輸出入のサポートをしております。

 

 

消費税コンプライアンス

消費税の取扱い(輸入消費税の支払い、顧客からの売上消費税の受取り、消費税の確定申告等)を適切に理解していないと、多大なコスト負担となる可能性があります。とても重要な論点ですので良くご理解の上、最適なビジネスモデルを御検討下さい。 

 

基本的な流れ(消費税の取扱い)

日本に拠点を有さない外国法人(非居住者)が日本へ輸入、その後販売を行う場合の消費税の取扱いは、大まかに以下3ステップで示すことができます。

  1. 輸入時 - 輸入消費税(輸入申告価格の10%)を税関に納付 ・・ ACP 税関事務管理人がサポート
  2. 販売時 - 顧客から消費税(売上の10%)を取得
  3. 確定申告(通常、年次) - 顧客から預かった消費税 (2) から輸入時に支払った輸入消費税 (1) 及びその他仕入に係る消費税の仕入税額控除をし、その差額を税務署に納付又は還付 ・・ Tax Representative 納税管理人(税理士)がサポート  

※税関事務管理人 ACPを利用して自らが輸入者となっていないと仕入税額控除や還付はできませんのでご留意願います。他の会社がIOR 輸入者になってしまっている場合、(1)の仕入税額控除はできないまま(2)受取消費税を国税(税務署)に納付しなければならず、多大なコスト負担となります。

消費税の免税事業者であれば、1及び2のプロセスで完了です。消費税の納税義務のある課税事業者(インボイス登録事業者である場合を含む)ば、1,2に続いて3(消費税の申告)の手続きが必要になります。

ステップ3の確定申告において、1.の支払消費税が2.の仮受消費税を上回る場合は差額「還付」、2.の仮受消費税が1.の支払消費税を上回る場合は差額「納付」という考え方となります。

 

自社が輸入者になることは重要?

とても重要です。税関事務管理人を利用して自らが輸入者(IOR)になっていないと、ステップ3の消費税の申告時に仕入税額控除ができません。ステップ1の支払消費税を控除できず、2で受け取った消費税全額全額を税務署に納付しなければなりません。還付は実現しません。極めて大きなコスト負担となりますので、他の会社を輸入者にしないようご注意下さい。

 

確定申告の要否、免税事業者であるかどうかの確認

非居住者・外国法人の納税義務

まず、上記ステップ2において顧客から受け取る消費税は、基本的には国税(税務署)に納付すべきものとなります。消費税は、事業者が国内において行った資産の譲渡等を課税の対象としていますので、非居住者・外国法人であっても日本国内において資産の譲渡等を行った場合には消費税の課税対象となり、納税義務が生じます。

免税事業者等である場合で、国税(税務署)に納付しなくてもよいケースもあります。

しかし、例えば以下いずれかに該当する場合は、免税事業者となることはできず、消費税の申告を要します。

<免税事業者とならず消費税の申告を要する代表例>

  1. インボイス適格請求書発行事業者
  2. 課税期間に係る基準期間(大まかに言うと2年前の事業年度)の課税売上高が1,000万円を超える事業者
  3. 特定期間(大まかに言うと前年度の最初の6ヵ月等)の課税売上高が1,000万円を超える事業者
  4. 資本金又は出資の金額が1,000万円以上である新設法人(特定新規設立法人を含む)の基準期間のない課税期間
  5. 課税事業者の選択を行った事業者

 

2024年4月の消費税法等改正に伴い、上記4.に関して、外国法人が日本国内において事業を開始した日における資本金の額又は出資の金額が1,000万円以上である場合(特定新規設立法人を含む)、その外国法人の国外における設立時期にかかわらず、その日本国内において事業を開始した年度から納税義務が生じ、申告を要することとなりました(2024年10月1日以後に開始する課税期間から適用)。

※上記は基本的な考え方を説明するものであり、個々の会社様の消費税の納税義務判定は税理士への相談が必要です。

 

免税事業者でも還付を受けられる?

課税事業者になりステップ3の確定申告が必要です。「課税事業者選択届出書」を税務署に提出して敢えて課税事業者となることで、確定申告を行い、支払った輸入消費税分の還付を受けるという手段も考えられます。支払消費税がステップ2.の受取消費税を上回る等の背景がある場合に検討されます。なお、税関事務管理人 ACPを利用して自らが輸入者となっていないと仕入税額控除や還付はできませんのでご留意願います。

 

インボイス適格請求書発行事業者になった方がよい?

ケースバイケースなので個別に相談頂きたいポイントではありますが、ざっくり言えば、B2Bで顧客が法人である場合にはインボイス適格請求書発行事業者になった方が良く(なぜなら、法人は消費税申告を行い、その際に適格インボイスでないと仕入税額控除ができなくなるため)、B2Cで顧客が一般消費者しかいないのであればインボイス適格請求書発行事業者になる必要性はやや下がります(一般消費者は消費税の確定申告をしない方が殆どなので)。

あまり制度をよく理解しないままインボイス登録事業者になっている会社も多いように見受けられます。登録事業者になれば、確定申告が義務となります。適切な専門家からアドバイスを得るようになさって下さい。

 

納税管理人・税理士のサポートは必要?

日本国内において非居住者が税務署手続き(上記のステップ3)をするには、納税管理人(Tax Representative)の選任が必要です。税関事務管理人(ACP)が税関手続き、納税管理人が国税(税務署)対応をすることとなります。税理士法では以下の業務は税理士の独占業務とされています。実質的に税理士でないと納税管理人の業務遂行は困難なことから、税理士のサポートが必要となります。

【税理士独占業務】

  • 税務書類の作成
  • 税務代理
  • 税務相談

当社では、国際税務に強い提携パートナーの税理士とともにサポートいたします。

 

 

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