更新 2024年5月1日 by SKアドバイザリー株式会社

日本から貨物を輸出する輸出者は、輸出貨物・取引が安全保障貿易管理(輸出管理)上の規制物品、規制取引でないか確認を行い、輸出通関に必要となる判定結果書類(該非判定書等)を準備し、必要に応じて経済産業省から許可を取得するといった法令対応が求められます。

外為法、輸出令、外為令、貨物等省令等で定められた、主にはリスト規制とキャッチオール規制へのコンプライアンス対応が必要になり、遵守できていない場合の罰則規定も有ります。

当社では、税関事務管理人として、数多くの日本に拠点を有さない外国法人(輸出者・輸入者)のサポートをしています。輸出者・輸入者である外国法人の代理人として、税関手続きに加え、安全保障貿易管理(輸出管理)で求められる業務(リスト規制の該非判定、キャッチオール規制含む取引審査、経済産業省への許可申請等)を行っています。

輸出件数の増加に伴い、これに適正に対応するため、法令で定める「輸出者等遵守基準:Ⅰ 輸出者等の遵守基準、Ⅱ リスト規制品輸出等の遵守基準」 を充足した安全保障貿易管理(輸出管理)の業務体制を構築しました。

輸出入プロフェッショナルの税関事務管理人として、各種コンプライアンスを適正に遵守して取り組んでまいります。

 

参考:経済産業省、安全保障貿易管理ガイダンス(リンク)

輸出の際に留意すべき各種法令

<関税法関連>
 ・関税法:禁制品(麻薬、児童ポルノ、知的財産権を侵害する物品、コピー、模倣品等)
<安全保障貿易管理(輸出管理)関連>
 ・輸出貿易管理令(輸出令):貨物
 ・外国為替令(外為令):役務(技術)
<他法令関連>
 ・文化財保護法
 ・鳥獣の保護及び狩猟の適正化に関する法律
 ・家畜伝染病予防法
 ・狂犬病予防法
 ・植物防疫法
 ・道路運送車両法
 ・麻薬及び向精神薬取締法、大麻取締法、あへん法、覚せい剤取締法

安全保障貿易管理規制の枠組み

1)リスト規制
 輸出してはいけない貨物・技術(高度な技術、軍事転用リスク)
 ・貨物:輸出貿易管理令(輸出令)別表第1の 1 ~ 15 項
 ・役務:外国為替令(外為令)別表の 1 ~ 15 項
2)キャッチオール規制
 ・輸出してはいけない相手(国連武器禁輸国や懸念される人・組織)
 対象
 ・貨物:輸出貿易管理令(輸出令)別表第1の 16 項 「食料品と木材等以外すべて」
 ・役務:外国為替令(外為令)別表の 16 項 「食料品と木材等以外すべてに係る技術」

輸出管理に係る罰則

刑事罰(最大)
 ・10年以下の懲役
 ・10億円以下の罰金(法人の場合)
 ・3千万円以下の罰金(個人の場合)
行政罰
 ・3年以内の物の輸出・技術の提供の禁止
 ・別会社の担当役員等への就任禁止

輸出審査手続きの流れ

Step-1:該非判定
輸出しようとする貨物、提供しようとする技術(プログラムを含む)が「リスト規制」貨物等に該当するか否かを判定する。
 ・リスト規制の具体的品目は、「輸出令別表第1」又は「外為令別表」、その具体的仕様は「貨物等省令」で確認。
 ・品目の確認:輸出品目を輸出令(別表第1)や外為令(別表)の内容と照らし合わせる。(判定対象は部分品や付属品も含む)
 ・スペックの確認:貨物等省令と照らし合わせる。経済産業省のウェブサイトの「貨物・技術のマトリクス表」としてわかりやすくまとめられているので、輸出品目のスペックを照合する。
 ・「項目別対比表」や「パラメータシート」を使用すると更に効率的。CISTECウェブサイトから購入可能。
 ・該非判定の結果、該当しない場合には、非該当証明書を作成する。
Step-2:取引審査
どのような相手か(引合い先、需要者の確認)、どのような用途に使われるのか(具体的な用途の確認)等のチェックを行い、当該取引を進めて良いか否かを判断する。
 (1) 「用途・需要者」の確認・判断
 (2) 「例外規定」の適用可否判断  ※無償特例、少額特例など
 (3) 「包括許可」の適用可否判断
 (4) キャッチオール規制に関する確認
  →必要に応じ、経済産業省への個別許可申請
Step-3:出荷管理、輸出
 ・該非判定及び取引審査が適切に完了しているか
 ・輸出する貨物や提供する技術と該非判定及び取引審査した内容とが同一であるか
 ・輸出等の許可が必要な場合には、許可を取得しているか

輸出許可申請

規制に該当する貨物の輸出や技術の提供をする際には、経済産業省から事前に許可を取得することが必要(通常、NACCSでの電子申請)

法令遵守(輸出者等遵守基準) 2010年4月施行

 ・業として輸出・技術提供を行う者(輸出者等)は、輸出者等遵守基準に従って、適切な 輸出・技術提供を行う必要がある。(外為法第55条の10第4項)
 ・安全保障上機微な特定重要貨物(リスト規制品)等を扱う輸出者等にあっては、I及び IIの基準を遵守する必要がある。なお、特定重要貨物(リスト規制品)等は扱わない輸出者等にあっては、Iの基準のみを遵守する必要がある。

輸出管理業務のコツ(帳票の活用)

自社で使用する帳票類(書式)を定め活用することで輸出管理業務を確実に実施し、違法輸出を未然に防ぐことができるようになる。
 帳票例
 ・該非判定:該非判定書
 ・取引審査:用途チェックリスト、需要者チェックリスト、明らかガイドラインシート、取引審査票
 ・出荷管理:出荷チェックリスト

無償特例 (許可申請が免除されるもの)

無償告示:輸出貿易管理令第4条第1項第二号のホ及びヘの規定に基づく経済産業大臣が告示で定める無償で輸出すべきものとして無償で輸入した貨物及び無償で輸入すべきものとして無償で輸出する貨物(リンク)
 ・無償で輸入し無償で返送する貨物(全 9 件から抜粋)
  - 日本から輸出された貨物で、日本で修理された後再輸出されるもの
  - 日本において開催された展示会などに外国から出品された貨物
  - 一時輸入のための ATA カルネ(通関手帳)により輸入された貨物
  - 一時的に入国して出国する者が携帯し本人が使用するもの
  - 他の貨物を運搬するために使用される貨物として輸入した貨物
 ・無償で輸入すべきものとして無償で輸出する貨物(全 7 件から抜粋)
  - 国際緊急援助隊が国際緊急援助活動に使用するため輸出する貨物
  - 国際協力機構が派遣する専門家が使用するために輸出される貨物
  - 一時的に出国する者が携帯し本人が使用するもの
  - 他の貨物を運搬するために使用される貨物として輸出する貨物

少額特例(許可申請が免除されるもの)

 (1)輸出令別表第1の1項~4項貨物:少額特例の適用なし
 (2)輸出令別表第1の5項~13項貨物のうち下記(3)以外:100万円以下
 (3)輸出令別表第3の3の規定により経済産業大臣が定める貨物(別表第3の3告示):5万円以下
 (4)輸出令別表第1の14項貨物:少額特例の適用なし
 (5)輸出令別表第1の15項貨物:5万円以下
 (6)輸出令別表第1の16項貨物:少額特例の適用なし
 ※なお、仕向地が懸念国向け(北朝鮮、イラン、イラク等)の場合には、少額特例の適用なし

米国の輸出管理規則 – EAR(Export Administration Regulations)

米国のEARの特徴として、「域外適用」が挙げられる。米国から一旦輸出された米国原産貨物や技術が、輸入国から再び輸出される場合、当該輸入国の国内法の審査に加えて、米国法に基づく輸出審査も必要となる。該当すれば米国政府の許可を受けなければならない。
 Step-1:EAR規制対象品目(CCL – Commerce Control List)か否かの確認
 Step-2:ECCN (Export Control Classification Number) があるかどうか確認
 Step-3:再輸出許可が必要かどうか確認
 Step-4:許可例外が適用できるかどうか確認
  →必要に応じ、米国政府に許可申請を行う