更新 2025年4月15日 by SKアドバイザリー株式会社
2023年10月から開始する2つの新制度(1)輸入者代行から税関事務管理人への切替(2)消費税インボイス制度
2023年10月から開始の2つの新制度に関する改めての情報発信です。
各々、税関と国税の異なる新制度では有るため分けて整理する必要が有りますが、関連付けて理解すべきポイントも有りますのでそこも踏まえて説明いたします。
税関の制度変更 (輸入者の意義の明確化)
1つ目は、税関の制度変更です。
2023年10月1日からの制度改正により、*ACP 税関事務管理人を利用して外国法人自らが*IOR 輸入者にならなければならない(他の者を名義上だけ輸入者とすることは認めない)ケースが増えています。
例えば、外国法人自らがIOR 輸入者とならずに、何ら売買にも関与しないフォワーダー・通関業者その他第三者をIOR 輸入者に名義上仕立てている場合、輸入者として認められない可能性が高く、注意が必要です。
改正の内容(輸入者の定義)を踏まえると、基本的に輸入者になれる者は以下のいずれかである必要があります。
(1) 通常の海外の売手と日本の買手による売買取引(輸入取引)による輸入:荷受人等
(2) (1)以外の形態で輸入する場合:
- 輸入申告時点において、「輸入後の貨物の処分権限を有する者」 又は、
- 「輸入の目的たる行為を行う者(以下例示)」
・ 賃貸借契約に基づき輸入される貨物は、当該貨物を賃借して使用する者
・ 委託販売のために輸入される貨物は、当該貨物の販売の委託を受けて自己(受託者)の名義をもって販売する者
・ 加工・修繕のために輸入される貨物は、当該貨物を加工・修繕する者
・ 滅却するために輸入される貨物は、当該貨物を滅却する者
同改正に至った背景としては、一例では有りますが、関税法に対する知識の乏しい、或いはコンプライアンス意識の低い外国法人及び輸入者代行業者が連携し、あたかも売買取引があるかのように製造原価程度の低価インボイス等を用いるなどして輸入時に支払う関税・消費税を適切に払わない事案が多発していたという問題があります。これを是正するために、外国法人には真の輸入者として税関事務管理人を用いることを推奨しています。税関事務管理人を用いる場合は、必ず、その商物流取引詳細を税関に対して説明しなければならず、その上で適切な輸入申告価格の設定が義務付けられます。
輸入申告価格は、関税定率法という法律に則り、多くのケースでは、国内販売(予定)価格から一定の国内費用を控除する方式が適用されます。しかし当社の見解としては、あまり輸入申告価格に関して心配しなくて良いと考えています。なぜなら、国際比較では日本は関税率が低いですし、輸入消費税はその名の通り「最終消費者が負担すべき税」なのです。確かに輸入者は輸入時に10%の消費税を支払う必要がありますが、販売時に顧客から回収できますし、また税務署に申告をすれば結局はイッテコイ(仮払消費税が多ければ還付、仮受消費税が多ければ納付するだけ)なので本来コスト負担になる性格のものではない間接税なのです。(なお、「輸入者」にならないと(販売者たる外国法人は輸入時の支払)消費税の仕入税額控除はできないため、その意味でも税関事務管理人を用いて自らが「輸入者」になることが必要になります。それから、税務署への消費税申告を行うには税理士に納税管理人を依頼いただく必要があります。税関手続きは税関事務管理人に、国税/税務署対応は納税管理人(税理士)に依頼するということになります。)
当社はプロフェッショナルの税関事務管理人として、スムーズに輸入通関できるように税関と事前相談して輸入申告価格その他重要なポイントを抑えていきます。これまで数多くの輸出入案件のサポートを行ってきましたが、一度も通関できなかったことは有りません。安心して御任せいただければと存じます。
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消費税のインボイス制度導入(国税の制度変更)
2つ目は、国税の制度変更です。
2023年10月の消費税インボイス制度導入に伴い、数多くの海外企業が消費税のインボイス発行事業者となっています。
日本の顧客(買い手)側が消費税の申告をする際に、仕入(売り手)側への支払消費税について仕入税額控除の適用を受けるためには、インボイス発行登録事業者からの仕入インボイスでないといけません。これが、数多くの海外企業(売り手側)がインボイス登録事業者となっている背景です。
さて、(売り手側である海外企業が)インボイス発行事業者になるということは自動的に消費税の課税事業者になりますので、税務署への消費税の申告が継続して必要となります。そのことをよくご理解いただいたうえで、貴社の販売先が(通常、消費税申告を行わない)消費者であるB2Cのビジネスモデルなのか、(通常、消費税申告を行う)企業に対する販売をされているB2Bであるのかを考慮し、インボイス登録事業者になるかどうか検討なさって下さい。
日本に拠点を有さない外国法人(非居住者)が日本へ輸入、その後販売を行う場合の消費税の取扱いは、大まかに以下3ステップで示すことができます。
- 輸入時 - 輸入消費税(輸入申告価格の10%)を税関に納付 ・・ ACP 税関事務管理人がサポート
- 販売時 - 顧客から消費税(売上の10%)を取得
- 確定申告(通常、年次) - 顧客から預かった消費税 (2) から輸入時に支払った輸入消費税 (1) 及びその他仕入に係る消費税の仕入税額控除をし、その差額を税務署に納付又は還付 ・・ Tax Representative 納税管理人(税理士)がサポート
※税関事務管理人 ACPを利用して自らが輸入者となっていないと仕入税額控除や還付はできませんのでご留意願います。他の会社がIOR 輸入者になってしまっている場合、(1)の仕入税額控除はできないまま(2)受取消費税を国税(税務署)に納付しなければならず、多大なコスト負担となります。
消費税の免税事業者であれば、1及び2のプロセスで完了です。消費税の納税義務のある課税事業者(インボイス登録事業者である場合を含む)ば、1,2に続いて3(消費税の申告)の手続きが必要になります。
ステップ3の確定申告において、1.の支払消費税が2.の仮受消費税を上回る場合は差額「還付」、2.の仮受消費税が1.の支払消費税を上回る場合は差額「納付」という考え方となります。
自社が輸入者になることは重要?
とても重要です。税関事務管理人を利用して自らが輸入者(IOR)になっていないと、ステップ3の消費税の申告時に仕入税額控除ができません。ステップ1の支払消費税を控除できず、2で受け取った消費税全額全額を税務署に納付しなければなりません。還付は実現しません。極めて大きなコスト負担となりますので、他の会社を輸入者にしないようご注意下さい。
【関連記事等】
- 輸入時に支払う消費税・顧客から預かる消費税
- 消費税のインボイス制度の影響、税関事務管理人(ACP)を用いた輸入のメリット
- 国税速報 実質的輸入者と輸入申告名義人に係る輸入消費税の取扱い
- 国税庁ホームページ 輸入手続を委託した場合の仕入税額控除の取扱いについて
※2024年の消費税法改正により、資本金等の額が1,000万円以上の外国法人に対する納税義務が厳格化され、免税事業者として扱われるケースは大幅に減少しています。
上記は基本的な考え方を説明するものであり、個々の会社様の消費税の納税義務判定は税理士への相談が必要です。
税関事務管理人(ACP)サービス
基本業務スコープ(税関事務管理人としてサポートさせていただく主な業務内容)
- 税関への税関事務管理人(ACP)届出に必要な書類一式の準備、届出作業
- インボイス等の輸入関係書類の準備
- 税関、物流会社/通関業者その他関係者との協議調整
- 適正な関税評価(輸入申告価格)の確認
- 税番(HSコード)、関税率、関税評価、原産地等の確認(事前教示等)
- 輸出管理、安全保障貿易管理業務(リスト規制の該非判定、キャッチオール規制含む取引審査、経済産業省への許可申請等)
- その他関税関連に関するアドバイザリーサービス
- 関税法上必要な帳簿の保存 など
※ACP 税関事務管理人を利用することで、輸入(非居住者を輸入者(IOR - Importer of Record)とする)及び輸出(非居住者を輸出者(EOR - Exporter of Record)とする)のいずれのケースにおいても同様にサポート可能です。
大まかなステップ
- 見積書確認~契約締結: 必要情報(下記参照)を頂いたらすぐに見積書提出いたします。
- 税関へのACP 税関事務管理人の届出開始: 概ね2週間程度で完了します。
- 初回出荷、輸出入の開始: フォワーダー/通関業者はクライアント側でご手配下さい。当社にて紹介することも可能です。
お見積りに関して
問い合わせページよりご連絡下さい。以下について御連絡いただきましたら迅速に御見積提出いたします。
- 輸入貨物の概要(商品紹介ウェブサイトのリンク等)
- 一回の輸入における、おおよその金額規模
- 輸入の頻度
- ビジネスモデル(Amazon/楽天、B2B販売、委託販売/Consignment、日本への資産移動など)
当社の消費税・納税管理人サービスについて
SKアドバイザリー株式会社では、税関手続きを代理する「税関事務管理人(ACP)」と、消費税の国税(税務署)手続きを代理する「納税管理人(JCT Tax Representative)」を包括的にサポートする「ワンストップサービス」を提供しています。
消費税の納税管理人業務の範疇に関しては、当社と提携する税理士事務所に業務委託し、当社が元請けとしてサービス全体の品質と進行を統括します。税関事務管理人が税理士と綿密に連携することにより、輸入時に支払った消費税の控除・還付を実現させます。
契約ストラクチャー(税関事務管理人及び消費税の納税管理人ワンストップサービス)
標準業務内容(消費税の納税管理人サービス)
当社と提携する認定税理士との連携により、以下の業務を提供いたします。
- 消費税の課税事業者登録ご支援(適格請求書発行事業者番号(インボイス番号)の取得等含む)
- 納税管理人の届出
- 消費税申告の準備・申告代理
- 税務署との連絡調整
- その他消費税に関するアドバイス
税理士の柔軟なご紹介体制
クライアントの事業概要や税務上の複雑性に応じ、国際税務に精通した税務アドバイザーをご紹介することも可能です。
当社の強み
- 関税・貿易分野における高い専門性:SKアドバイザリー株式会社は、関税・貿易の法律と実務に精通したプロフェッショナル集団です。代表の澤田は通関士資格を有し、貿易会社での実務経験と、世界4大ファームであるKPMG(KPMG税理士法人)での関税コンサルティング経験を経て2020年に独立。関税法を軸とした確かな知識と経験に基づき、丁寧かつ的確なサポートを提供します。
- 税関事務管理人および消費税の納税管理人のワンストップ対応:パートナー税理士との連携を通じ、税関手続きの代理人(税関事務管理人 - ACP)と国税・税務署での消費税手続きの代理人(消費税の納税管理人 - JCT Tax Representative)を包括的にサポートすることができます。
- 関係法令コンプライアンスの徹底:輸出入に係る関係法令の遵守を最優先に取り組んでいます。税関等当局との協議相談をクライアントに代わり実施し、適正な輸出入オペレーション構築を支援します。
- 英語・中国語でのコミュニケーション:英語でのコミュニケーション(英語会議のファシリテーション含む)を得意とし、クライアントからの厚い信頼を得ています。中国語でのコミュニケーションができるスタッフも揃えています。
- 豊富な実績と信頼:年間80社程度の税関事務管理人の登録を行い、全てのクライアントが問題無く輸出入を実施できています。
- 他法令物品対応の体制強化:当社および関係会社とのパートナーシップ体制を構築し、化粧品(薬機法)、電気用品安全法(PSE)規制製品、食品および食器(食品衛生法)などの法令物品についても輸入者・税関事務管理人としての対応が可能となりました。
- Amazon SPN (Service Provider Network) 公認 サービスプロバイダー:Amazon SPN の公認サービスプロバイダーとして、税関事務管理人サービスを提供しています。(税関事務管理人/貿易コンプライアンス分野)
当社の御客様(税関事務管理人サービス)
連携実績のある国際物流会社の例
数多くの物流会社様との連携実績があります。当社は、税関事務管理人としての役割を担い、物流会社様に物流・通関・倉庫業務などの対応をいただいています。
税関事務管理人 (ACP) おすすめ 情報:
食品衛生法の関連貨物(食品、食器類など)のACP 税関事務管理人/IOR 輸入者サービス
3-税関事務管理人の取扱制限 - 当社体制強化により法令物品も対応可能に
6-税関事務管理人が必要になるケース(Amazon, DDP取引など)
9-消費税のインボイス制度の影響、税関事務管理人(ACP)を用いた輸入のメリット
11-税関事務管理人の届出代行申請、輸出入の代行業務サポート